1年前に相続税の申告をしたお客様から、ご質問がありました。
「相続した投資信託が、相続税の申告をしたときより値上がりしているのですが、何か申告が必要ですか?」
申告しなくてもいい場合、申告が必要な場合、必要ではないけど申告した方がいい場合があります。
申告をしなくてもいい場合
申告しなくてもいい場合の1つめは、売却していないときです。
上場株式や投資信託は、売却して利益が出た場合、利益に対して税金がかかります。
売却していなければ、どれだけ値上がりしていようと、税金はかかりません。
ですので、申告は必要ありません。
では、売却して利益が出た場合はどうでしょうか?
売却して利益が出ていても、申告しなくてもいい場合があります。
それは、相続した上場株式や投資信託を、亡くなった人の特定口座(源泉あり)から、相続した人の特定口座(源泉あり)に移した場合です。
特定口座(源泉あり)ですと、証券会社側で税金計算をして納税してくれるので、ご自分で申告する必要はありません。
ただ、申告する必要はなくても、申告した方がいい場合があります。申告した方がいい場合で、ご説明します。
ちなみに、相続した上場株式や投資信託を売却したときの利益はどのように計算するのでしょうか。
ご自分で購入された上場株式や投資信託を売却したときの利益は、売却したとき価額と、購入したときの価額の差額です。100万円で購入した株式を150万で売却したら、50万円の利益です。
相続した上場株式や投資信託を売却したときの利益は、売却したときの価額と、亡くなった人が購入したときの価額の差額です。
次の例で考えてみましょう。
売却したときの価額 150万円
相続したときの価額 100万円
亡くなった人が購入したときの価額 80万円
売却利益は、150万円と80万円の差額70万円です。相続したときの価額、100万円は関係してきません。
申告が必要な場合
相続した上場株式や投資信託を売却して利益が出ている。申告が必要になるのは、一般口座で売却した場合です。
一般口座で売却したときは、証券会社側で税金の計算をしてくれません。そのため、売却益が出た場合は、ご自分で確定申告をする必要があります。
亡くなった人が一般口座で持っていた上場株式や投資信託は、相続した人の一般口座に移されます。
相続した人の一般口座から特定口座へ移すには手続きが必要となります。
申告した方がいい場合
特定口座で売却したので申告する必要はないけど、申告した方がいい場合はどんなときでしょうか。
一つは、相続した財産を売却したときの特例を使うときです。
この特例は、
- 相続した上場株式や投資信託を、相続したときから3年と10ヶ月以内に売却している
- 相続税の申告のときに相続税を支払っている
ときに、使うことができます。
この特例(相続税が取得費に加算される特例)を使うと、売却益にかかる税金を少なくすることができます。
他に申告した方がいい場合は、
- 上場株式や投資信託を売却したたことによる損失が出ていて、損失を来年以降に繰り越したい場合
(来年以降、売却利益がでたら今年の損失と相殺し、来年の税金を減らすことができます) - 他の証券会社に特定口座を持っていて、利益が出ている特定口座と、損失が出ている特定口座を相殺したい場合
になります。
これらは、ご自分で購入された上場株式や投資信託を売却されたときに申告した方がいい場合、と同じです。
申告した方がいい場合をご説明しましたが、注意点もあります。申告をすると、ご家族が扶養控除、配偶者控除が受けれなくなる場合や、国民健康保険や後期高齢者医療の保険料があがる場合があります。売却益にかかる税金が少なくなっても、ご家族の税金や社会保険料に影響がでることもあるので、他への影響を考える必要があります。
【あとがき】
新年にむけて、新しい箸と飯碗を買いました。飯碗は、奮発して源右衛門窯のものを購入。
年末なので、デパートには普段よりたくさんの種類の器が置いてありました。器を見るのは好きなので、飯碗だけでなくいろいろな器を見て楽しめました。